Ⅳ クロスライズアップ(飛び立つための手続き2)
1.風の強さに応じた立ち位置(テイクオフの位置)
2.キャノピーと自分の立ち位置・方向
3.身体の向きの替え方
4.キャノピーの整え方
5.身体を正面に向き替えるためのブレークコードとライザーの持ち方
6.ライズアップ
(1)ライズアップ前の再確認
(2)ウィンドソック(吹き流し)による風の再確認
(3)実際のライズアップ
(4)立ち上げ途中の傾きの修正
7.立ち上げ後 機体の安定のさせ方「スイートスポット」の存在
(1)ブレークコードの基本的位置
(2)横方向の安定(うしろ向き)
(3)キャノピーの前後・上下の調整(うしろ向き)
8.前方に身体の向きを替える
9.前方に向いてからのキャノピーの安定維持
(1)横方向の安定(前向き)
(2)キャノピーの前後・上下の調整(前向き)
(3)キャノピーを頭上に上げ安定させているとき
10.風が弱いときと強いときの走り出し方の違い
クロスライズアップ時の基本動作ポイント
a. 心と動作をゆっくりに保つ。
b. キャノピーを頭上に上げるまでは、キャノピーの左右の傾き補正に意識を集中する。
c. キャノピーを頭上に上げたならば、キャノピーの前後の位置調整に意識を集中する。
1.風の強さに応じた立ち位置(テイクオフの位置)
上下の位置
・風が強いときは、テイクオフの斜面の下位置に立つ。
・風が弱いときは、テイクオフの斜面の上位置に立つ。
上下の位置調整
想定よりも、キャノピーと自身の位置が、テイクオフ斜面の上過ぎる部分に来てしまった場合
・キャノピーを地面に置いた状態で、ブレークコードを手に2回ぐらい巻く。
・そして、手を背中側後ろに目いっぱい引いて、坂の下側うしろに後退する。
・下からの風が強いときは、ブレークコードと一緒にCライザーを引くと良い。
・ブレークコードとCライザーを一緒に引きながら、ズルズルとキャノピーを引きずり、望まし位置まで後退する。
想定よりも、キャノピーと自身の位置が、テイクオフ斜面の下過ぎる部分に来てしまった場合(風の力を借りて、斜面を登っていく)
・キャノピーをほぼ立ち上げ状態のきれいな形に拡げる。
・ブレークコードを手に2回巻き、Aライザーを持つ。
・この状態で、両側から均等に風を受けるようにしながら、軽くAライザーを引く。
・そうすると、キャノピーが空中に少しだけ浮く。
・浮いたときに、キャノピーに引っ張られるように、前へ坂の上側へ、数歩進む。
・ここ作業を何度か繰り返し、望む位置まで、少しずつ上がっていく。
左右の位置
テイクオフのグラウンドの左右の位置は、基本的にはなるべく中心位置に立ちたい。
テイクオフのグラウンドで、左右の真ん中ではなく、左に寄ってしまった場合、右に移動する方法(下図を参照)
・①キャノピーの中心にたっている。
・②キャノピーの中心から、左側に移動する。
・左側に移動した位置で、キャノピーを空中に引き上げる。
・左側に立つことにより、風の力でキャノピーが右に傾く。
・③キャノピーが右に傾くと、身体は右に引っ張られ、自然と右に移動する。
・望む場所に移動できたら、キャノピーを下に落として、移動を止める。
・移動のポイントは、いったん移動したい方向とは反対の位置に、身体を位置させることである。

2.キャノピーと自分の立ち位置・方向
・キャノピーの中心線上に、キャノピーを背にして立つ。
・キャノピーと正対(90度直角)していることを確認する。
・換言すると、自分の身体と風の方向を1直線状にして、キャノピーの中心と正対(90度直角)する位置に立つことを意識する。
・キャノピーの中心と正対(90度直角)する位置に立つことによって、キャノピー両側に均等に風を受けられる状態を作ることができる。
3.身体の向きの替え方
・クロスライズアップの場合は、身体の向きをパラグライダーの方にチェンジする必要がある。
・左のライザーA、B、Cとブレークコードのコントロールグリップをまとめて左手で持つ。
・そのまま握った左手を上にあげ、左手を中心軸として、右手と身体を右(時計)回りにまわす(下図)。

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4.キャノピーの整え方
・この廻った状態で、もう一度、風に対して直角に立ち位置を確認する。
・立ち位置が決まったら、ライン類とライザーの外側から、ブレークコードのコントロールグリップ握る。要注意:飛行状態になったときに、両手のブレークコードが、外側・後方から引ける状態になっていることを確実に確認すること。飛行状態を想定し、手を上に上げて、ブレークコードを、外側・後方から引けていることを確認する。
・ブレークコードのコントロールグリップは握ったままで、他のライザーA、B、C全部を手から外す。


・左右それぞれのブレークコードだけを2回手に巻き 注1)、手を後ろに引いた状態を作る。

・ブレークコードを後ろに引いた状態で、Aラインが軽く張られる位置まで後退します。
Aラインが軽く張られる位置

注1)ブレークコードを2回手に巻く理由。
もしも、ブレークコードを2回手に巻かない場合は、下図のようにキャノピーの下側がエアインテークよりも後方に位置する状態になる。この場合、空気の流れがキャノピーの上、上翼を流れる。それと同時に、キャノピーの中に風が吹き込む。そうするとその翼面に斜め上方向の力が生じる。その場合、一気に翼面に空気が流れ込んだとき、急激な強い力が斜め上方向に生じ、身体が前方上方に吹き飛ばされる可能性が生じる(ブレークコードを2回手に巻く理由の図1)。それを未然に防ぐために、前もってブレークコードを2回手に巻くことによって、ブレークコードを十分に引き、キャノピーの下側をあらかじめ引いた状態にしておく。そうすることにより、一気に身体は引っ張られることを防ぐ(ブレークコードを2回手に巻く理由の図2)。
ブレークコードを2回手に巻く理由の図1

ブレークコードを2回手に巻く理由の図2

・この位置で、左右のライザーの束を左右に交差させる(下図)。

・右手のブレークコードを握ったままで、右手は向かって右側のAライザー(ライン)を持つ。左手も同様に、左手のブレークコードを持ったままで、左手は向かって左側のA ライザー(ライン)を持つ。


・結果として、下図のようなAライザー(ライン)、ブレークコードの持ち方になる。この段階で、右手には、向かって左につながるブレークコードと向かって右側につながるAライン、左手には、向かって右につながるブレークコード、向かって左につながるAラインを握ることになる。
上から見た図 Aライン、ブレークコードの持ち方
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・このラインの持ち方で、後ろを向いた状態で、キャノピーを扇形(かまぼこ型)にする作業を行う。
・次に、拡げたパラグライダーのエアインテークに少しずつ空気を入れるために、Aライザーを引いたり(離れる)、戻したりする(近づく)作業を行う。
エアインテークに少しずつ空気を入れる作業

・ある程度、キャノピーが立ち上がったら、Aライザーを手から離し、ブレークコードでキャノピーをきれいに拡げる。
キャノピーをきれいに拡げた状態

・扇形にきれいに広がって、キャノピーの半分ほどが立ち上がる。
・この時、いちばん後ろのリアライザー(黄色or緑色)を引くと、両端部分がきれいに拡がる。
・そして、全体的に両端まで均等に空気が入ったら、かつ風の向きもOKだったら、2回巻いていたブレークコードを元に戻す。立ち上げる前には、必ず2回巻いていたブレークコードを元に戻す。
・次の段階で、立ち上げとともに、前向きに身体の向きを変える動作を行う。
テイクオフ場にたいするきれいに広げた状態の位置作り・身体の向き・走る方向
テイクオフ場の斜面にたいして、キャノピーと身体の位置関係は風に対応させて位置づける。テイクオフ場の形と方向に惑わされずに行う必要がある。
〇 風が、真後ろから来ている場合は、下図のようにテイクオフ場の形に合わせてセッティングをする。

〇 風が、やや横斜め後ろから来ている場合は、下図のようにテイクオフ場の形にとらわれずに、風の方向を優先させて身体を位置づける。但し、テイクオフの為に走る方向は、斜度の高い方向を優先させて走る。

キャノピーをきれいに拡げた状態で待機する方法
キャノピーをきれいに拡げライズアップ準備が出来て、ライズアップの順番を待っているとき、強い風が吹いてくる。その場合、キャノピーの下側がまくれて、キャノピーの形が崩れたり、キャノピーの位置が移動してしまったりするときがある。
・それを避ける一番の方法は、風の強くない下側の位置へ立ち位置を下げることである。
・下げた位置で立ち上げて、前を向き、テイクオフの高い位置へ、後退する。
・テイクオフのための十分な距離を前方にとれたなら、前方へ走り出す。
・もう一つの方法は、ブレークコードとAライザーを持ったまま待機する。
・通常は、キャノピーをきれいに広げたら、飛び立つ準備として、巻いていたブレークコードをほどいて、テイクオフの順番を待つ。
・しかし、風が強いときは、風の巻き上げを防ぐために、キャノピーをきれいに拡げた状態で、もう一度、ブレークコードを手に2回巻いて、Aライザーを軽く持って待機する。
・下からの風で、キャノピーが宙に浮かないように、Aライザーを引き過ぎず、そして、ブレークコードを緩めず引いたまま、維持する。
・エアインテークから空気をキャノピーの中に取り込み、キャノピーの形を保持する。
・自身のテイクオフの順番が来たら、手に2回巻いていたブレークコードをといて、通常状態でブレークコードを持つ。
・そして、Aライザーとブレークコードを握り、テイクオフの立ち上げ手続きを行う。
さらにもう一つの方法は、キャノピーを馬蹄形にする方法である。
・風の状況に応じて、キャノピーを拡げる位置を決める。
・位置を決めたならば、そこでキャノピーをいわゆる馬蹄形で、かつ真ん中を上に膨らませた形に手で拡げる(整える)下図参照。

・この状態で、ブレークコードを手に2回巻いて、左右のライザーの束を左右に交差させる。
・右手のブレークコードを握ったままで、右手は向かって右側のAライザー(ライン)を持つ。左手も同様に、左手のブレークコードを持ったままで、左手は向かって左側のA ライザー(ライン)を持つ。
・ようするに、キャノピーを扇形(かまぼこ型)にする通常の作業の構え・体勢を整える。
・このままの状態で、テイクオフの順番を待つ。
・順番が来たら、キャノピーを拡げ、整える作業を行う。
・キャノピーをきれいに扇形(かまぼこ型)にできたら、キャノピーを引き上げ、実際に立ち上げ作業を実行する。
・そして、テイクオフする。
5.身体を正面に向き替えるためのブレークコードとライザーの持ち方
・2回巻いていたブレークコードの2回巻を元に戻し、そのままブレークコードの持ち手は替えないで、そのまま握ったままで左右のAライザー(Aライン)を左右それぞれの手に持つ。
・ライザーを身体に近いところで交差させる(下図)。


・左下にあるAライザー(Aライン)を上から左手で握る。

・右上Aライザー上から右手で握る

・それぞれの手にブレークコードのコントロールグリップとAライザー(Aライン)が握られている。

〇 Aラインとブレークコードの持ち方
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