top of page

 Ⅵ 空中での操作

 1.空中での基本的な操作と飛行状態(ポーラーカーブ)
 2.空中で曲がるとき
 3.曲がる=高度が下がる
 4.あてかじ(舵)の意図・意味
 5.空中でサーマル(上昇気流)を感じたとき

 6.リッジソアリング
 (1)基本
 (2)応用
 
7.空中から素早く降下する方法
 (1)ビッグイヤー(両翼端折り)
 (2)両翼端折り(ビッグイヤー)+アクセル(アクセレーター)
 8.強風下のアクセルの使い方
 9.やぶ(藪)に落ちたとき(やぶ沈)
10.格好よく飛ぶために

 

 1.空中での基本的な操作と飛行状態(ポーラーカーブ)
 
 空中での操作は、ブレークコードの引き具合によって調整する。その引き具合は、下のポーラーカーブの図に示されているように、それぞれの意図にたいして大体の位置を想定できる。


 「腰より下 ストール」の赤い点は、ブレークコードを腰より下まで引いた場合の前進速度と沈下速度を示している。この赤い点において、前進速度は0m/s 、沈下速度は結構な速さを示している。すなわち、この点において機体は全く前進せず、そのまま真下に落下(ストール)することを意味している。
 「肩 最小沈下速度」の緑の点は、前進速度は最速ではないが、沈下速度は他のどれよりも最も遅く、落下までの時間が長くなる。沈下をなるべく遅らせ、距離を稼ぐのに有効なブレ―コード位置になる?
 「バンザイ 最良滑空速度」の青色の点は、前進速度は最小沈下速度よりも早いが、沈下速度も速いので、落下までの時間は短くなる。しかし、一方では前進速度が速いので、目標地点に到達するための時間削減には有効なブレ―コード位置になる?
 「アクセル踏み 沈下速度大」のオレンジ色の点は、前進速度も速く、沈下速度も速い点である。早く進み、早く落ちる。迅速な高度処理の時に有効なブレ―コード位置、アクセル位置になる。


 

             ポーラーカーブの図

ポーラーカーブ図.png

 2.空中で曲がるとき
 ・曲がるときは、行きたい方向をまず見る(顔を向ける)。
 ・次に、行きたい側に体重を掛ける。体重のかけ方は、脚を組むように行う。
 ・左に行きたい場合は、右足を左足の上左に組むよう
にする。
 ・完全に、右膝を左脚の膝の上に載せるというほどの組み方ではなく、軽く組む感じ。
 ・そして、ブレークコードを引く、という順序になる。

 補足説明:ブレークコードを引き、曲がろうとするとき、曲がりたい方向のブレークコードを引くが、実際には、引くと同時に引いた側の翼端側に引くことによる揚力が生じる。本来、曲がりたい方向へ機体を傾けて(下げて)曲がりたいのだが、翼端に揚力が生じるのでそれをなるべく抑えたいので、前もって体重移動により、曲がりたい翼側に荷重を掛けて置く(下げておく)と、曲がるための効率が良くなる。

 3.曲がる=高度が下がる
 ・パラグライダーで曲がるとき、片方のブレークコードを引く、そして引くことによって引かれた翼端側に多くの風の抵抗が生じる。
 ・そうすると抵抗が生じた側の翼端が、他の翼端よりも翼端速度が落ちて遅くなる。
 ・一方、反対側の翼端は、操作前の速度を保つので、引かれた翼端側・速度の遅くなった翼端側よりも前へ出ることになる。
 ・それらの結果として、引かれた翼端側へ曲がっていくことになる。

 この時、引かれた側のキャノピー翼は、翼端スピードが遅くなるので、翼の上を流れる空気スピードが遅くなる。翼の上を流れる空気スピードが高いと揚力が大きく、翼の上を流れる空気スピードが低いと揚力が小さくなる。引かれた側と引かれなかった側と比較すると、相対的に、引かれた側の揚力(上に引き上げる力)が小さくなる。その結果、引かれた側にキャノピーの翼は下がり、片側に傾くことになる。キャノピーの翼が傾くということは、傾いた側にパラグライダー全体が滑り落ちていくことを意味する。
 したがって、曲がるイコール高度が下がる、ということになる。曲がることは必然的に高度が下がることを意味する。


 

 4.あてかじ(舵)の意図・意味
 この高度の必然的な下がりを防ごうとする操作が、あて舵である。あてかじ(舵)とは、曲がる方向にブレークコードを引いているときに、それと同時に、曲がる方向とは反対側のブレークコードを適度に引くことを言う。その操作により、キャノピーの傾きをなるべく抑え、斜めに滑り落ちることを防ぐ意図がある。

 あてかじ(舵)の方法
 ・曲がりたい方向のブレークコードを引く。
 ・キャノピーが傾き、パラグライダーが曲がり始める。
 ・曲がり始めたら、それに合わせて曲がる方向とは反対側のブレークコードを少し引く。
 ・そのまま、意図した曲がりと傾きの角度を得られるように、両方のブレークコードの位置を調整する。
 ・意図した展開が終わったら、両方のブレークコードの位置を元に戻す。


 

 5.空中でサーマル(上昇気流)を感じたとき
 ・飛行中、機体の上昇を感じたら(アルチメーターの音がピピピ・・、と鳴ったら)。
 ・風をつかむ(握る)意識を持つ。ブレークコードを引き、キャノピーの中に空気を入れてふくらませるイメージ(空中で風をつかむ感触=揚力を高める方法)。
 ・ブレークコードを握ったこぶしをヘルメットの横、両耳あたりまでいったん下げる。
 ・上昇している間、そのままの手の位置を維持する。
 ・下降を感じたら(アルチメーターの音がブブブ・・、と鳴ったら)、ゆっくりとこぶしを元の位置、肩より上に、手を上に目いっぱい伸ばしたフルグライドの位置に戻す。

 風が強いときの操作
 ブレークコードを引く量を少なくして(キャノピーをあまり傾けない)、あて舵のコントロールで制御する。
 風が弱いときの操作
 ブレークコードをゆっくり焦らず、きちんとしっかりと引く(キャノピーを傾ける)。

 6.リッジ ソアリング

 (1)基本
 斜面上昇風を利用して、高度を上げていく方法で、下記の留意点がある。
 ・斜面に近づき過ぎない。
 ・斜面の頂点を絶対に越えてはいけない(パラフィールドの場合は、斜面を登るコンクリート道路上に出てはならない)。
  頂点を越えると風がダウンブローになり、急速に落下してしまう。
・水平距離(斜面からの近さ)と垂直距離(斜面からの高さ)の両方を意識する。

 

水平垂直距離風含む越えてはいけない.png

 ・ソアリング時、リフティングされている時に曲がることを意識する。

 ・ソアリングに入ると、速度がゆっくりになる。
 ・それと同時に、意識的に速度をゆっくりにする。両手のブレークコードを引く。
 ・方向を変えるとき、体重移動を意識して、あて舵を行いつつ、キャノピーのバンク角度をなるべく少なくする。
 ・旋回は、斜面から離れる方向に行う。


 

 

リッジソアリング修正偏流飛行2025.1.17.png

 注意点:
 ソアリング時、できるだけ空気をはらんで上昇しようと意図し、目いっぱい急速にブレークコードを引くと、往々にしてピッチング状態になり、不安定になる。ブレークコードを急速に引くと、キャノピーが後方へ引かれ、それに反して身体は前方へというブランコ状態が生じる。それを避けるためには、できるだけ丁寧に、柔らかくゆっくりとブレークコードを操作することである。

(2)応用(Bテイクオフから、P2テイクオフまで、ソアリングして上がる方法)

 ・Bから、通常通りにテイクオフする。
 ・テイクオフしたら、すぐに右方向へ曲がり、BテイクオフとA テイクオフの間の藪を目指す。
 ・藪の上で上昇気流により、上方へ引き上げられる。
    ・引き上げられるとので、前述したソアリングの基本にならって、高度を上げていく。
 ・何度か、S字ターンを繰り返して、ある程度の高度を稼ぐことができたならば、Bテイクオフから、P1テイクオフを目指す。

 

リッジソアリング完成図2024.11.13.png

 7.空中から素早く降下する方法
 (1)ビッグイヤー(両翼端折り)
 キャノピーの両翼端を折って、揚力を減じて降下する方法。
 ・Bライン(グレー)のラピッドリンク(ビッグイヤーの下図の黄色〇内)を握る。

ビッグイヤーの図2.png

・その握った手をビッグイヤーの図3のように、内側から外側に回すようにして矢印の部分まで引き込む。

       ビッグイヤーの図3

ビッグイヤー図1.png
つぶし.png

・そうすると、両翼端が内側下に折り込まれる。
 ・その作業を、右側と左側、片方ずつ行う。
 戻す作業
 ・片側ずつ引き込んでいたラインを手から離す。その離した側の翼の回復を確認する。
・回復を確認したら、もう片方の側の引き込んでいたラインを手から離す。そして回復を確認する。

 アクセル(アクセレーター)
 アクセルを掛けることによって、迎え角を小さくする。そうすることによって、パラグライダーの速度を高める。
 ・アクセルフットバーの半円の部分に、片脚を曲げて、かかと部分を掛ける。
 ・かかとを入れた側の足を前方に伸ばして、反対側の足のかかとを引っ張りだされてきた四角形部分に入れる。
 ・そして、その四角形部分に入れた脚を伸ばす。
・次に、最初に半円の部分に入れた足を半円から外し、今度は四角形の部分に掛ける。
 ・両足を掛けた状態で、両脚を前方に伸ばす⇒アクセルを掛けた状態

(2)両翼端折り(ビッグイヤー)+アクセル(アクセレーター)
 ・まず、アクセルフットバーを踏み込む。
 ・次に、両翼端折りを行う。  
  元に戻す操作
 ・最初に、アクセルフットバーを戻す。
 ・それから、両翼端折りを片側ずつ元に戻す。

 8.強風下のアクセルの使い方
 強風下において、前方になかなか進めないときにアクセルを使用すると、パラグライダーをより効果的に操作できる。アクセルを使用するとき、下記の3つの目的・機能操作を意識して使い分ける。
 (1)滑空速度を上げる ↑ 踏み込み幅(0~100%)
 (2)最小沈下速度を得る ↑ 踏み込み幅(50%前後)
( 3)降下を早める ↓ 踏み込み幅(50%以上ストールしない範囲)

 アクセル使用時の最重要注意点:
 ・必ず両足均等に踏み込む。図参照
 ・アクセルを踏み込んでいるときは、ブレークコードを引いてはいけない。
 下図のように、アクセルを踏み込んで翼が前傾している状態の時に、ブレークコードを引くと、キャノピーの翼の後方が下がる。そうすると、図の赤い部分に風があたり、一挙に翼の後方が前方に舞い上がり、キャノピーが前転してしまう可能性が大いにある。

 

雲の下アクセルの使い方.png

 雲の下のアクセルの使い方・おまけ
下図のように、雲の下、雲に吸い込まれないように、アクセルを使い(踏み)つつ、距離を伸ばして飛んでいく使用方法。

雲の下アクセルの使い方ピンク.png

 9.やぶ(藪)に落ちたとき(やぶ沈)

 ・まず、最初にやるべきことは、キャノピーをたぐり寄せ、収納袋に入れることである。
 ・キャノピーとハーネスが接続されたままの状態で、右側、あるいは左側の引き込みが容易な方をまず引き込んでいく。
 ・キャノピーを引き込むときは、できる限り片側から引き込むようにする。
 ・キャノピー両端を持って同時に引き込もうとすると、キャノピーでやぶ(藪)を包み込む状態になって、引き込みに大きな力を要する、あるいはキャノピーとコードのつなぎ目に余計な負荷を掛けてしまう。
 ・キャノピーを引き込むとき、やぶに引っ掛からないように、ラインを1本ずつ確認しながら引く。
 ・ある程度引っ張り、キャノピー本体を手でつかむことができる位置まで、たぐり寄せる。
 ・この段階で、今度はラインではなく、キャノピー本体をつかみ、本体そのものを引き込んでいく。
 ・うまくキャノピー全体を手元に引き寄せることができたら、キャノピーとハーネスの接続を解除して、収納袋に入れる。

 ・次に、やぶ(藪)からの脱出時、レスキューパラシュートを枝に引っ掛け、意図しないレスキューの開放を防ぐ必要がある。
 ・そのために、ハーネスを裏返しして(裏表を逆にして)、レスキューの持ち手を内側に(身体)にする。
 ・そして、先ほど収納袋に入れたキャノピーを収納袋ごと、裏返しした状態のハーネスの中に入れる。
 ・そして、裏返しした状態のハーネスを背負う
 
 ・やぶの出口方向を見極める方法 
 ①落ちる直前に、落下地点を記憶にとどめ、最も近いと思われる方向へ向かう。
 ②指導教官に落ちた位置を確認してもらって、脱出方向の指示を仰ぐ。
 ③上空を飛んでいる他のフライトパイロットに教えて頂く。
 ④明らかに明るい方が見えたら、そちらへ進む。この方法の場合、やぶの真ん中あたりに落ちた場合は、判断が難しく、迷う可能性が高い。
 ⑤スマートフォンを携帯している場合、マップの現在地点表示(航空写真)で位置を使用する。

 このGPS機能で、非常に使い勝手の良い現在位置表示アプリがあります。「Map Scope」というものです。参照URLを記しておきますので、ぜひ試してみて下さい。
「Map Scope」のURL: https://bit.ly/3Z4bDct 
ちなみに、この「Map Scope」は、私のパラグライダーの友人が作ったものです。

 

 ⑥パラフィールドの場合、やぶの形が坂に沿って横長に設定されているので、坂に平行・水平に抜け出ようとするよりも、坂にたいして垂直方向、坂を登る、あるいは坂を下るという方向を歩く方が、抜け出すための距離が少ない可能性が高い。

 補足注意:やぶから脱出するとき、レスキューパラシュートの保持・維持に注意する。やぶに落ちた場合、やぶから脱出することに無我夢中になり、レスキューパラシュートを枝等に引っ掛け、レスキューパラシュートを引き出してしまうことが多々ある。
 

 10.格好よく飛ぶために

 ・飛行中、脚を開かない;脚をなるべく閉じて、体重移動等の動作を行う。

 ・飛行中、脇を締める:ブレークコードを操作するとき、キャノピーとパイロットをつなぐライン(サスペンションライン)に沿って、脇を締めてブレークコードを操作する。

 ・常に視野を広く、まわりの状況を確認しつつ飛行する。

空飛びノート

©2023 空飛びノート。Wix.com で作成されました。

bottom of page